農家のあとつぎの独り言

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zoom RSS 「有機」だから健康なわけではない。

<<   作成日時 : 2009/08/04 22:03   >>

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時事ドットコムより引用。
「有機」に健康効果なし=一般食品と栄養変わらず−英調査
【ロンドン時事】農薬や化学肥料の使用を減らして作られた有機食品の栄養は、一般的な食品とほぼ変わらず、取り立てて健康に好ましい効果をもたらすわけではない−。英食品基準庁が委託した調査報告が29日公表され、消費者が抱く有機食品の効能とは反する意外な結果が明らかになった。
 委託を受けたロンドン大学衛生熱帯医学大学院が、過去50年間に発表された文献を精査した。13の栄養素のうち、ビタミンCやカルシウムなど主要10栄養素では栽培方法によって大きな違いは出ないとの結果が得られたという。
 食品基準庁は調査結果について、「有機食品を食べるなという意味ではなく、食べたからといって健康面でより優れた効果が得られる証拠はないことを示している」と指摘している。(2009/07/30-05:33)

Yahoo!ニュースのコメント欄には、「農薬大量使用で不健康になりたくないから食べてる」「栄養以外の体に悪い「毒素」を取り入れるかどうかが、有機にこだわるかどうかの違い」「『消費者が抱く有機食品の効能』がわかっていない」「栄養価は目に見えないけど、味は絶対に美味しい」等、「栄養価ではなく安全性が高いから」有機食品を支持するとの意見が上位を占めています(もっとも、Yahoo!のほうも下位のコメントに一通り目を通すと、必ずしも有機食品万歳一辺倒ではないこともわかります)。
記事が出た当初は静観していたのですが、apjさんのブログに「有機農法と波動」というエントリが出来、コメントしていたらやっぱり記事を書きたくなったので、以下コメントします。

以前も書いた記憶があるのですが、「有機≒オーガニック」とは自然回帰と言うよりも、低投入持続型、つまりなるべく外から持ち込むものと外に排出するものを減らし、化学製品に頼らず、環境を維持しようというのが本来の趣旨でした。しかし、人により解釈が様々に分かれ、あるいは誤認を誘発するような表示が多発したため、試行錯誤を経てガイドラインが出来たものです(もちろん「有機」の認識は未だにバラバラなので、ガイドラインに対する異論も多々ありますが、少なくとも専門家の検討とパブリックコメントを取り入れて作られたものではあります)。

そして、ガイドラインに従った「本当の有機農産物」を作るためには、一般的に言って慣行栽培に比べ相当の技術と労力を要します。なので、有機農産物のコストは慣行栽培のものに比べて高くなります。農業者にしてみれば「苦労して作った分、高く買ってほしい」と思うのは当然です。
しかし、消費者にしてみれば、あくまで「商品の価値」の対価を払っているに過ぎず、その対価に「農家の苦労」が含まれているという意識を持つ人は非常に少ないと思います。だからこそ、商品そのものの差別化を図るキーワードとして、当初「安全」と「おいしい」が旗印になったものと思います。

しかし、農薬の安全性の差異に関しては、「安心!食べ物情報」のメールマガジン508号で触れられていますが、
 「栄養の問題より、農薬の害が問題だから、有機栽培を選ぶ」と
いう認識なんでしょうが、実はイギリスではそちらの方の結論が先
に出ていて、有機栽培だからといって安全性が高いということはな
い(=通常栽培だからといって危険ということはない)ということ
が発表されています。

という結論です。
また、栄養価の差異については上記記事のとおりです。

本来的に有機農産物の意義とは「農家の労力に報いる」ことですから、「安全」「おいしい」に大差が無くても、その農家の姿勢を支持する人が購入すれば良い話です。もちろん大きな市場は望めないでしょうが、お互い騙しあいなしの信用の上に立って、かつ双方の満足が得られれば、それでよしとするものです。国会では既に「有機農業の推進に関する法律」が超党派で制定されましたが、あくまで持続可能な農業を前提として行うべきで、「特定の農法や農産物が優位である」という宣伝に繋がらないよう、今後もウォッチする必要があると思います。


ところで、論文が発表された本家イギリスでは、有機食品を支持する「自然派」により、「FSAには反論メールが殺到」したとのことです。
オーガニックを否定した英政府論文に自然派が猛反発――ニュースな英語
上記記事中でも以下のように触れられていますが、「有機の優位性否定=自分否定」と受け止める人が多い、というのも事実と思います。「誰がなんと言おうと、『有機食品=健康』」という迷信に凝り固まってしまう人ほど、そういった感情的な反発をしてしまうものと思います。
なぜかというとこのFSA論文は確かに「informed choice」のための情報を提供したわけですが、それによって「オーガニック=善」と確信していた人たちの「way of life(生き方)」そのものを否定したと、そう受け止められたからだと思います。つまり「あなたたちが今まで科学的裏付けがあると思って、わざわざ高いお金を払って追求してきた暮らし方は、科学的裏付けのない思い込みに過ぎないのですよ」と言われたと。「王様は裸だ」というか「あなたたちの信仰は迷信だ」と言われたというか。

(中略)
○オーガニックを陰謀論にはしたくない

自然は健康にいいはず。実験室や工場で作ったものより、青空の下で、大地の上で作ったものの方が体にいいはず。人間はもっと地球に寄り添って生きなくては——と、そう思いたいのは、動物としての人間の本能みたいなものかと思っていました。けれどもそれは科学的な裏付けのない思い込みに過ぎないという論文を前に、かなり心がざわつきました。自分が、できるだけ無農薬・無添加の食品を選んで買っていたのは、思い込みからなのか、経験的にそっちの方が体調がいいからなのか(後者だと思うのですが、それさえもが思い込みだったら、もう出口がない。思い込みからくるプラシボ効果で体調が良くなっているんだという考え方もあるでしょうが)。

いずれにしても、FSA論文の精度を問うだけならともかく、「データが何といおうと、オーガニックは体にも環境にも優しいはずだから、データは信じない」という思い込みオンリーの反論を目にすると、ちょっと困ってしまいます。まるで自分が今までバカにしていた「陰謀論者」のひとりに自分がなってしまったような、実に居心地の悪い歯がゆい思いで。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
随分、見に来ませんでしたが、中国駐在中なのですね。御苦労様です。

有機が安全だとか、美味いとかって、売る側の目論見と買う側の安心感が連携した結果できた、かなり感情に由来するお題目であったのは確かですね。

私の場合、有機圃場を増やしていますが、いい加減、農薬と害虫のいたちごっこに嫌気がさしたのが最大の原因です。
アザミウマやハダニの卓効剤が出ても寿命は実質数年。
最近ではキラップが象徴的で、周囲での使用がないにもかかわらず、離れた複数の地域で、使い始めから3年が限度で4年目には完全に無効になってしまったと・・。ウチもこれにドンぴしゃで、全く効果が無く、結局、別の剤の再散布になってしまいました。
そんなこんなで、結局、物理剤の散布が当面は最も安心できるかな?ということになり、それならいっそ有機化・・・。化成肥料も窒素ベースでも大して使っていませんでしたし、特にこの春は寡雨で効きが悪かったところへ、摘採後の雨続きで、一気に肥効が出てしまい根をやられてしまいました。で、過湿の上に、窒素が効き過ぎた結果、酷い株は枯死、良くても株が半分になると言う結果です。
気候変動の影響が大きいとは言え、それに対応可能な栽培でないと生き残れませんので、付加価値があるか無いかではなく、継続的に変動の少ない栽培方法として、有機に振り向けつつあるところです。

有機肥料のほとんどは輸入な訳ですから、これはこれで問題なわけですが、国内で加工される食品が無くならない限りは何とかなるのかな?と思っています。例えば菜種であり、牛肉(骨粉)
tea-farm
2009/08/13 23:17
tea-farmさま>

ご無沙汰してます。私もこのところ農薬掲示板にお邪魔していないので、世間の動きから大分遠ざかっています。

>気候変動の影響が大きいとは言え、それに対応可能な栽培でないと生き残れませんので、付加価値があるか無いかではなく、継続的に変動の少ない栽培方法として、有機に振り向けつつあるところです。

「低投入・持続型農業」が本来の趣旨だったと理解していますので、tea-farmさんの取り組みがまさしく理にかなった方法だと思います。
やまたろう
2009/08/17 12:14
有機でも化成でも腐らない枯れる野菜が鼻くそほじくってできる方法があるそうですよ。
水耕、化成でイチゴが25度できたそうですよ。
ありんがとー
2009/12/19 08:59
ありんがとーさん>
ソースも何も示されていないので、適切なコメントをしづらいのですが、糖度25度ということは、苺の食感というよりは半乾燥のドライフルーツか苺ジャムに近いですね。それが苺として美味しいのかどうかはさておき。
やまたろう
2009/12/22 11:05

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